「おかあさん」「なあに」
「おかあさんていい匂い」
「お料理している匂いでしょう? 卵焼きの匂いでしょう?」

この歌、ご存知ですよね。
1番は料理の匂い、2番は洗濯の匂い。
お母さんの匂いは生活の匂いなんですね。
子供にとってのお母さんは、機械や書類に埋もれて働く人ではなく
自分や家族の為にご飯を作ってくれて、洗濯をしてくれて、
ちゃんとした暮らしができるために頑張ってくれている人。

社会の変化で、家庭の中でのお父さんの役割、お母さんの役割が
大きく変化してきています。
それでも、小さな子供にとって、自分を優しく抱きしめ命を守ってくれるのは
おかあさん。お父さんは、母親が安心して子供を抱きしめることができるよう守る人。

生まれたばかりの赤ちゃんは匂いに敏感です。
人間以外の哺乳動物はみな生まれてすぐに母乳を求めて動き出します。
猫も犬も牛も馬も生まれてすぐに動き出すし、数時間で立ち上がります。
いるかや鯨も海の中に産み落とされて、そのまま泳ぎだします。
哺乳動物の中で人間の赤ちゃんだけが、非常に未熟な状態で生まれてきます。
誰かの手を介さないと、安全に生まれてくることができません。
そのあとも、ちゃんとお世話しないと生きていくことはできません。
そんな未熟な状態であるにもかかわらず生まれたばかりの赤ちゃんを母親の胸に乗せると
母乳を求めて、もそもそと動いて手をチューチューなめたりします。

羊水の匂いは母親の汗の匂いと似ています。
出産を終えて汗まみれになった母親に抱かれると、おおきな産声で泣いていた赤ちゃんは
安心して静かに呼吸しはじめます。
赤ちゃんは羊水と血液のまじった独特の匂いです。
は、お互いにそうした匂いに包まれることで
母親は母としての本能(母性本能)が刺激され、わが子をいとしく感じ、
赤ちゃんは自分を守ってくれる存在を匂いとともに認識します。
そカンガルーケアの瞬間の重要さに多くの医療者たちが気付いて
カンガルーケアをする病院は当たり前になってきたし、
出産後も沐浴をしないことで赤ちゃん皮膚バリアが守られ本来の生理機能が高まる
という考え方から退院の日に初めて沐浴する病院もあります。

その後も、赤ちゃんの表情をよく観察していると、母親に抱かれたときと
他の人に抱かれたときでは微妙な違いがあることに気付きます。
赤ちゃんは母親の匂いを認識しています。
生まれたときからずっと包まれていたお母さんの匂いは
その後の赤ちゃんの人生の中での母親の匂いです。
それは実際の匂いとしてではなく、記憶の中に
「母の匂い」として刻み込まれ、辛いときや寂しいときに心の奥で
自分を包んでくれる優しさの象徴となるようです。

人それぞれの母親の匂いがあります。
あなたが出産したわが子を、誰よりもいとしいと感じた瞬間の匂いです。